アルコール摂取は体に良いのかどうか

アルコール摂取が腎機能によいのか、体に良いのかを聞かれる機会が多いです。

ある程度は飲んでいただいて問題ありませんよ!と話しているのですが、実際どうなのか気になったので調べてみました。

①↑腎機能と蛋白尿に対して

Yamamoto R, Li Q, Otsuki N, Shinzawa M, Yamaguchi M, Wakasugi M, Nagasawa Y, Isaka Y. A Dose-Dependent Association between Alcohol Consumption and Incidence of Proteinuria and Low Glomerular Filtration Rate: A Systematic Review and Meta-Analysis of Cohort Studies. Nutrients. 2023 Mar 25;15(7):1592. doi: 10.3390/nu15071592. PMID: 37049433; PMCID: PMC10097279.

リンク: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37049433/

日本の先生が書かれたsystematic review、meta-analysisです。

12 本の出版物の、11 研究を評価しています。そのうち6件は日本の研究でした。

・蛋白尿に関して

・飲酒者は非飲酒者に比較して統計的に優位に蛋白尿のリスクが低かった (overall RR 0.95 [95% confidence interval 0.93, 0.98]). 

・アルコール摂取量が、0.1–12.0 g/dayで顕著にリスクが低く、36.1–60.0 g/dayでは逆に蛋白尿のリスクが高かった。

・eGFRに関して

アルコール消費量が0.1–12.0 g/日、そして12.1–36.0 g/日の飲酒者は、非飲酒者と比較して統計的に優位に低eGFRのリスクが 低かった (0.93 [0.90, 0.95] and 0.82 [0.78, 0.86], respectively)

以下は論文から引用した図です。

Dose-dependent association between alcohol consumption and incidence of proteinuria (a) and low eGFR <60 mL/min/1.73 m2 (b). RR, relative risk. Solid and dashed curves represent RR and 95% confidence interval, respectively. Circles represent the number of participants of each category of alcohol consumption.

続いて、全死亡についてのリスクはどうかという論文も見てみました。

Zhao J, Stockwell T, Naimi T, Churchill S, Clay J, Sherk A. Association Between Daily Alcohol Intake and Risk of All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-analyses. JAMA Netw Open. 2023 Mar 1;6(3):e236185. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.6185. Erratum in: JAMA Netw Open. 2023 May 1;6(5):e2315283. PMID: 37000449; PMCID: PMC10066463.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37000449/

上の論文によると、①少量の飲酒が非飲酒に比べて有意な生存率改善は見いだせなかった、②1 日あたり 25 g 以上のアルコール摂取をする飲酒者では全死因死亡のリスクが増加し、1 日あたり 45 g 以上飲酒するとリスクが大幅に増加するようです。

特に女性では25 g/日以上のアルコール摂取での全死亡リスク増加に注意が必要なようです。

2つをまとめると、過度なアルコール摂取は腎機能にも、生存率にもよくなさそうです。ただ、適度な飲酒が健康増進効果があるのかはよくわからない、というところなのかのなと感じました。

「健康だからお酒が飲める」可能性はあるかもしれないので結果解釈には確かに注意が必要かと思います。健康状態が悪く、敢えてお酒を飲んでいない方が非飲酒者の群に含まれていたとしたら、結果に影響を与えそうです。

また、人種によってアルコールの代謝能が違うことは頭に入れておかなければいけないかと思います。1本目は日本人が多く含まれている研究結果なので、日々の臨床で説明するときも大きく間違っていなさそうかな、という印象です。

ちなみに、アルコールの摂取量のg換算が、実際どのくらいなのか気になったので調べてみました。

厚生労働省のサイトhttps://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.htmlを参考にしました。

厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html

12g/日

 2023/12/18 に確認。

 ビール 350 mLで12 g/日は越えてしまいます。また、25%焼酎 1合、9%チューハイ ロング缶、ワインハーフボトルで36 g/日は越えてしまいます。

 気持ちよく飲酒しているとすぐに摂取量が増えてしまいそうです。

 酒は百薬の長ということわざもありますが、飲みすぎはよくないということですかね。

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